「SMILEcoみやぎ」について

植田 拓郎

植田 拓郎

東北大学 理事
(産学連携担当)

 5年間の本プロジェクトを振り返るにあたり一言皆様にご挨拶申し上げます。
 この「SMILEcoみやぎプロジェクト」は文部科学省の強力なご支援の下、本学のリチウム・イオン電池技術と評価技術をベースに、その製造・事業化を担う地域企業、宮城県や産業支援機関が一体となって進めて参りました。

 こうした活動の成果として、日本で唯一のMn系リチウム・イオン電池の生産工場((株)I・D・F)の設立や製品ラインナップの開発も進んでおり、いよいよ2023年春より本電池を搭載した「アイガモロボット」が全国に市場投入されます。

 また、これまでに類を見ない一滴で液体の粘度を測定できる「超微量粘度計」事業の新たな大学発ベンチャーとして「SMILEco計測株式会社」を2022年1月に設立し、装置販売に向けた取組みを進めて参りました。

 このように本プロジェクトを通して研究シーズから事業化を進めて参りましたが、昨今のウクライナ情勢を受けたエネルギーのひっ迫やカーボンニュートラルの実現に向けて世界そして日本全体が大きく動き出すなか、地方においても「地域に適したグリーンエネルギー技術」や「それを支える周辺技術」の実現が非常に重要になっております。 そのため、今後に向けましては「電池事業/粘度計事業の継続的発展」と次世代の「新技術の開発」といった循環的な「エコシステム」の確立に向けて、プロジェクトの継承組織として「SMILEcoみやぎ協議会」を学内に設置し、「地域イノベーション・エコシステム」を発展させて行く所存です。

 以上、この報告書ではこれまでの成果を皆様にご報告するとともに、今後の地域ならびに循環型エコシステムがより一層発展していくことを期待して、ご挨拶とさせていただきます。

長坂 徹也

長坂 徹也

東北大学 副学長・教授
未来科学技術共同研究センター センター長

 本センターはこれまで5年間にわたり、文科省、宮城県、ソニー株式会社他地元企業のご支援を受け、「SMILEcoみやぎプロジェクト」の推進に力を尽くして参りました。長谷川史彦前センター長の本プロジェクトへの熱い思いを引き継ぎ、現センター長として無事にプロジェクトを成功裏に終えることが出来、安堵しております。関係各位のご協力とご理解に厚く御礼申し上げます。

 一方で、プロジェクト成果の社会実装と、これを中心とした地域エコシステムの更なる発展の実現が強く求められています。まさに勝負はここから、ということになります。皆様ご存知のように、社会の電池へのニーズは、EVシフトや再エネ普及に応えるべく、多種多様であり、電池業界では熾烈な競争が展開されています。その中にあって、いかに最適の電力のソースと需要を結び付けられるかが、本プロジェクトで開発されたMn系リチウム・イオン電池の普及の鍵となります。優れた特性を活かせるマーケティングを進めたいと存じます。これに対して同じく本プロジェクトのもうひとつの大きな果実である栗原式「超微量粘度計」は、世界に比類のない装置です。従来より2桁以上高い性能を発揮することから、激烈な競争の中にあるMn系リチウム・イオン電池とは対照的に、コンペティターが存在しないオンリーワンの存在です。電池の性能評価技術の提供と同時に、ライフ・バイオサイエンス分野等での新たな分析評価機器としてブレークしてくれることを祈念します。

 本報告書では、「SMILEcoみやぎプロジェクト」を出来るだけわかりやすく総括しております。お目通し頂くと共に、今後の地域エコシステムの発展への一助になれば幸いです。これまでの関係者各位のご理解、ご協力、ご尽力に、改めて深甚なる謝意を表し、ご挨拶に代えさせて頂きます。

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